いつもお読みいただきありがとうございます。

今回は少し趣向を変えて、私が以前に執筆したSF掌編小説と、それをベースにして制作したブラウザゲームを公開します。

https://note.com/p3_vp/n/ndc80b09dce4c

頭の中にあった短い物語を、実際にプレイできるマルチエンディング形式のテキストアドベンチャーゲームとして形にするということで、最近はやりのGoogle Antigravityを使い、新しく挑戦してみました。

🎮 ブラウザゲーム版の公開

物語を拡張し、独特な世界観でプレイできるゲームを作成しました。 PC・スマートフォンのブラウザから、インストール不要でそのまま無料で遊べます。

物語の中には3つの分岐点があり、あなたの選択次第で2700年の日本の結末が変わります。

👉 ゲーム『Neon & Memory: 2700年のノスタルジア』をプレイする

「記憶生命体」の視点に立ち、人類の進化を見届けてみてください。 普段の思考の整理やアウトプットとはまた違う、物語を仕組みとともに形にするプロセスは非常に刺激的な体験でした。 プレイした感想や、どのエンディングにたどり着いたかなど、ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです!

以下は小説本編です。

澄んだ音と駆け巡るひかり

一本の光の線が目の前にあらわれては、遠ざかっていく。

次元の壁を越える跳躍が幾度となく繰り返され、やがて我々は目的の惑星に到着した。

目の前に広がるのは、かつて「日本」と呼ばれた国。西暦2700年の姿だ。 酸性雨に濡れるコンクリートの廃墟と、意味を失って明滅を続けるネオンの残骸が、泥臭くも妖しい光を放っている。

「この地表の人間たちはいつの日か、我々と同じこの次元ワープ体験ができるだろうか?」

私が問うと、通信回路越しにいつものつれない返事が返ってきた。

『体験は出来ないだろう。彼らの寿命はあまりにも短い』

相棒の言葉は冷たいが、事実だった。 それもそのはずだ。我々は数千年前に肉体という枷を捨て、宇宙のネットワークに同化した「記憶生命体」なのだから。 正確に言うと、我々にも物理的な器としての肉体はある。しかし、我々の記憶(コア)は、いつでもその器から分離させることが可能だ。

惑星から惑星への果てしない旅には、強大なエネルギーを放つワープ装置を起動しなければならない。 最新世代の装置であっても、生身の肉体がこれに近づくことは許されない。正確に言うと、近づくこと自体はできるが、その瞬間に閃光と共に蒸発し、跡形もなく消え去ってしまうだろう。

『さあ、早くミッションをこなして我々の家へ帰ろう』

相棒が無表情なホログラムのアバターを通して訴えてくる。 我々のミッションは、この退行してしまったプリミティブ(原始的)な惑星の生態系を再び高度化し、彼らを星の海を渡れる「知的な生命体」へと仕上げることだ。

我々はその対価として高い報酬をもらい、このなんとも言えない奇妙で雑多な、ネオンの街角を這いずる生物たちに「考え」を教えている。

しかし、彼らの進みはあまりにも遅い。 我々が学んできた高度な知識や論理を理解する、それ以前の話なのだ。 少し教えては彼らが自滅し、また一から教え直す。その終わりのない繰り返しに辛抱できず、途中でこの惑星を見限って帰っていった同僚たちの顔を思い出した。

肉体と記憶が分離できないとは、なんと不便で可哀そうな生物達だろうか。 生まれては、旧時代のガラクタを巡って争い、血を流し、すぐに死んでいく。 知性のかけらもないまま生を消費し、ほんの少しの知性が芽生えた途端に、寿命や病が彼らを連れ去ってしまう。

だが、雨に煙るドット絵のような街並みを観察していたその時、小さなノイズが観測された。

プリミティブな彼らのうちの数人が、旧世紀のサーバーを繋ぎ合わせ、自らの意識をデータ化する「電脳化」の儀式を成功させようとしていたのだ。 肉体を持たない記憶生命体が、この泥沼のような廃墟から、彼ら自身の力で生まれつつある。

『……そろそろ、別の惑星へ移るときが来たのかもしれないな』

私がそう呟くと、相棒はわずかに微笑んだように見えた。 瞬く間にワープ装置が立ち上がり、周囲の空間が歪み始める。彼らの未来を祝福するように。

一本の線が、再び目の前にあらわれては、遠ざかっていく。

澄んだ音と駆け巡るひかり。 明日はどこへ向かおうか。