2025年11月18日
歯車|時を刻む精密機械と人間の対話|掌編小説
灼熱のように暑かった時期が過ぎ去り、。すっかり広くなった空に、彼の言葉が響き渡った。この時間を刻むための精密な装置は、。オレンジ色と灰色が混ざった生け花のように見えて美しかった。
「そのやり方じゃだめだ」
灼熱のように暑かった時期が過ぎ去り、 すっかり広くなった空に、彼の言葉が響き渡った。
歯車が複雑に絡み合って動く、 この時間を刻むための精密な装置は、 いつ見ても規則正しく動いている。
夕日に照らされた歯車は、 オレンジ色と灰色が混ざった生け花のように見えて美しかった。
タケルはこの業界に入ってまだ日が浅い。 熟練した時計技術者であればすでにこの時計の修理も 終わっていたかもしれない。
既に顧客に頼まれて1ヵ月が立とうとしているが、 タケルはまだ完了できる見通しがつかなかった。 そんな自分を思ってか、いつも無口な先輩が声をかけてきた。
「左の歯車の仕上げが甘い。」 この人には何が見えているのだろうか? 1000分の1ミリメートル単位で仕上げたこの精密な部品を見て、 なぜそんなことが即座に言えるのだろうか?
曰く、歯車一つひとつに魂が宿っているだとか。 魂を込めて、それぞれの歯車がきれいなダンスを踊らないと、 綺麗な時間は刻めない。
綺麗な時間を刻むこと。
それにはこの装置の中で、いつもで踊り続ける部品たちのダンスが必要だ。1000分の1ミリ以上の部品がさらに調和して生み出す、 この時間を刻むための装置は奇跡以外の何物でもない。
タケルの時間に対する概念は、 時計技術者になってから大きく変わった。
この装置の中では、時間は雑に刻まれない。
それまでは、ただ、すぎるだけだった時間は 時計の中で、綺麗に流れていた。 そして、この調和の中に入り、自分も綺麗に踊ろうと思った。
綺麗には踊れなくても、精一杯うまく踊ろうと思った。
沈みゆく夕日に照らされて、 精一杯にうまく踊る時計たちは、今日も綺麗に輝いていた。
(了)