その「プロダクト4P」、本当に機能していますか?
研究開発や新規事業開発に携わる皆さん、新しいプロダクトの企画書に「プロダクト4P」のフレームワークを使い、まとまったような気になっていませんか?
素晴らしい「Product(製品)」のアイデアが生まれ、その価値を訴求するために4P分析を行う。それは事業化への重要な一歩となるはず。しかし、開発担当者が一人で埋めたその4Pには、新規事業を失敗に導く大きな落とし穴が潜んでいると私は考えています。
特に、「Product」以外の部分です。 Place(流通)、Promotion(販促)、Price(価格)の3つのPを、開発者が深く考察しきれているでしょうか。多くの場合、答えは「No」です。そして、その安易な「書いたつもり」が、将来有望なはずの事業の芽を摘んでしまうのです。
では、なぜ開発者は他の3Pを書けないのか?
これは開発者の能力の問題ではありません。構造的な問題です。
Place(流通)、Promotion(販促)、Price(価格)は、既存事業のノウハウの塊である。
これらは市場や顧客との無数の接点を通じて最適化されており、開発者が一人で描けるほど単純ではない。
さらに、ここで「両利きの経営」の視点がなければ、事態は悪い方向へと進みます。「両利きの経営」とは、既存事業を深化させつつ(深化)、同時に新しい事業を探索する(探索)という、2つの異なる活動を両立させる経営アプローチです。
既存事業の強みは、まさに長年培ってきた他の3Pにあります。 しかし、その強みは「既存のプロダクト」とあまりに強く結びついているため、新しいプロダクトに対しては、時として強力な抵抗勢力となってしまうのです。
「その売り方では売れない」 「どうやって売るんだ?それよりも既存製品のXXを改良した方がいい」 「そんな新しい試みに、うちの販売リソースを割くべきなのか?」
こうした声は、既存事業の論理からすれば当然かもしれません。しかし、新規事業(探索)の担当者にとっては、前に進むための梯子を外されるようなものです。
失敗への典型的なシナリオ
ここで、悲劇的な悪循環が生まれます。
開発者の孤立: 既存事業からの協力が得られないと悟った開発者は、諦めて、本来書けるはずもないPlace, Promotion, Priceを自分自身で書き始めます。
既存事業の傍観: 本来であれば、その3Pを真剣に考え、新規事業を成功に導く責任の一端を担うべき既存事業の担当者たちは、「関わらない」という選択をします。リスクを取りたくない、余計な仕事はしたくない、という思いが働くのです。
事業の失敗: 練られていない戦略、活用されない既存リソース。その結果は火を見るより明らかです。事業は想定通りにうまくいくはずもなく、静かに終わりを迎えます。「だから言わんこっちゃない」という言葉だけを残して。
この悲劇を避けるために必要な「両利きの経営」の視点
では、どうすればこの状況を打破できるのでしょうか。鍵は、経営者の強いリーダーシップと「両利きの経営」の組織的な理解にあります。
- 経営者による「土台づくり」
何よりもまず、経営者が「事業は『深化』と『探索』の両輪で進む」という両利きの経営の概念を深く理解し、組織全体に浸透させることが不可欠です。そして、「新規事業の成功は、既存事業のリソース活用なしには成し遂げられない」という明確なメッセージを発信し続けなければなりません。
その上で、モチベーションの高い新規事業担当者と、豊富な経験とリソースを持つ既存事業担当者が、対立するのではなく連携してプロジェクトを進められるような組織構造や評価制度といった「土台」を意図的に構築する必要があります。
- 全員が持つべき当事者意識
事業の「探索(新規事業)」と「深化(既存事業)」、その両方に携わる全ての人が、「自分たちは一つの会社の未来を創っている仲間なのだ」という当事者意識を持つことが重要です。
新規事業は、既存リソースをいかに活用できるかで成功確率が大きく変わります。そして既存事業は、新規事業から生まれるイノベーションによって、未来の競争力を得ることができます。これは、どちらが偉いという話ではなく、互いに不可欠な存在なのです。
まとめ:経営知識なしに、本当のプロダクト4Pは書けない
プロダクト4Pは、単なるフレームワークではないと考えます。それは、多様な専門知識を持つ人々の協力があって初めて完成する、事業全体の設計図です。だから、一人では書いてはだめなはずです。
開発者が素晴らしい「Product」を生み出す。 営業やマーケティングが、その価値を最大化する「Place」「Promotion」「Price」を構築する。
この連携を実現するには、個々の能力だけでなく、組織全体が「両利きの経営」という共通言語を持つことが不可欠です。この経営の基礎知識なしに、安易に4Pを語るべきではありません。
と今までの私の経験から記載を致しました。 皆さんの力に少しでもなれたら幸いです。