日曜日の午後、妻と近所のイタリアンレストランでランチをしてきました。
パスタもピザも前菜も美味しく、価格はリーズナブルで、 いつ行っても30分以上待ちがある大繁盛店です。
これだけ安くて、お店の経営は大丈夫なのかな?と心配をしてしまいますが、おそらくポイントは「レジ横の広めのスペース」です。
レジ横のスペースに、 お店手作りの「特製ドレッシング」や「持ち帰り用ケーキ、デザート」「ドライフラワーまで」などなど がずらりと並んでいます。
食事を終えたお客さんたちは、満足げな顔で次々とその商品を手に取っていきます。 なんだったら、それだけを目当てに買いに来ていたお客さんも何人かいました。(そして私もついつい、ドレッシングを一本購入してしまいました。)
今日はこのお店、なんで繁盛していんだろうと整理をしたかったので、 MBAのマーケティング講義で習った教えについて振り返りましょう。
マーケティングの父、レビットの「3つの教え」
1960年、セオドア・レビットという学者が『マーケティング・マイオピア(近視眼)』という論文を発表し、世界中の経営者に衝撃を与えました。 彼が説いた有名な 「3つのポイント」 を、中学英語レベルのフレーズとともに見ていきます。
Point 1: “What business are you in?”(あなたは何屋さん?)
レビットは アメリカの鉄道会社の失敗 を例に挙げました。 鉄道会社はかつて最強でしたが、飛行機や車に負けて衰退しました。 なぜか? 彼らは自分たちを 「鉄道屋(Railroad business)」と定義 し、鉄道を守ることだけに固執したからです。 もし自分たちを 「運送屋(Transportation business)」 と定義していれば、資源を活用し飛行機事業にも参入して、今は覇者だったかもしれません。
Point 2: “The Drill and the Hole”(ドリルと穴)
「客が買っているのは、4分の1インチのドリルではない。4分の1インチの穴である」
これはレビットの最も有名な格言です。聞いたことがある方も多いと思います。
顧客は「物体」そのものが欲しいわけではありません。 「体験(価値)」にお金を払っているのだと説きました。
Point 3: Selling vs. Marketing(販売とマーケティングの違い)
「販売(Selling)は 売り手の都合(在庫を処分して現金化したい) に焦点を合わせる。 マーケティング(Marketing)は買い手のニーズ (満足したい)に焦点を合わせる」
売り込み(Selling)をしなくても、顧客の方から「売ってください」と来る状態を作るのが、真のマーケティングです。
イタリアンレストランのケーススタディ
この3つのポイントを、先ほどのイタリアンレストランに当てはめてみましょう。
もし彼らが自分たちを単なる 「料理提供業(飲食店)」 と定義していたら、ランチの単価を上げることに必死になり、ランチの質は下がり、客足を遠のけていたかもしれません。もしくは、美味しさを追求して高額なランチを提供しても客足は遠のくでしょう。
事業の定義の拡大: 彼らは「顧客の食事体験を豊かにする仕事」 と定義しているのではないでしょうか。だからこそ、店内の食事だけでなく、家の食卓に並ぶドレッシングやその他ケーキも重要な商品になります。
ドリルではなく「穴」を売る: 客は「あの美味しいサラダを家でも再現したい」という体験を買っています。ランチでその「味(価値)」を証明しているからこそ、レジ横のドレッシングが飛ぶように売れるのです。
お店で証明して、帰りしなに物を買わせる。そういえばパン美味しかったなぁ。
売り手(Selling)よりMarketing: もちろん店員さんはと無理な売り込み(Selling)を一切していませんでした。 最高に満足度の高いランチを提供したことで、客が自ら「これを家でも食べたい」と思う状態(Marketing)が完成していたのです。
ランチは「信頼獲得(マーケティング)」の場。 レジ横は「収益回収(販売)」の場。
この一連の流れが美しく設計されているからこそ、あのお店は安売り競争に巻き込まれず、長く愛されているのです。
まとめ:あなたのビジネスは近視眼になっていないか?
「良いものを作れば売れる」というのは、作り手の近視眼(マイオピア)かもしれません。
「鉄道」にこだわって「運送」を忘れていないか?
「ドリル」を売ろうとして「穴」の提案を忘れていないか?
日曜日のランチで見た風景は、そんなビジネスの基本を思い出させてくれました。
次回は、この「顧客志向」をさらに具体的な戦略へと落とし込んだマーケティングの続き(フィリップ・コトラー)について振り返りたいと思います。お楽しみに!
それでは、良い一週間を。