今週末、久しぶりに一人でぶらぶら散歩をしました。 歩くのはいいものです。歩きながら考えを巡らせると、頭の中のもやもやが整理され、体もすっきりします。 やはり自分にとって歩くことは、思考をクリアにするための大切な時間だと感じました。

帰り道にふとスーパーに立ち寄ると、旬のイチゴが特売でたくさん並んでいました。娘がまだ小さかったころ、イチゴが大好きで、いつもむしゃむしゃと食べていました(父にはまわりませんでした)。一方、ミカンは、筋張っていてそれがうまく飲み込めず、あまり好きではありませんでした。

しかし、イチゴは季節にならないと店頭に並びません。

イチゴがない季節、市場にはミカンやバナナ等がありましたが、娘にとっては「食べたいものがない状態」でした。

私はミカンも大好きなので、「手軽に、定期的に、安く食べたい」と思っています。ところが最近のスーパーには、糖度を極限まで高めた「高機能で高価な高級ミカン」や「高級リンゴ」「高級フルーツ」が並んでいることも少なくありません。「たしかに美味しいけれど、そこまで甘くなくても、安くて普通のミカンで十分…」と少し感じることがあります。

今週のテーマは、クリステンセンの名著『イノベーションの最終解』です。

本書では、業界の変化を予測するための第一歩として「変化のシグナル(機会はどこにあるか)」を探ることを挙げています。クリステンセンは、市場にはイノベーションの機会となる「3つの顧客層」がいると指摘していました。

【ポイント1】ビジネスの「無消費者」はどこにいる?

これを先ほどの果物に当てはめてみましょう。

1.無消費者: 「イチゴが食べたいのに売っていない状態」自分が欲しいものがない、あるいはアクセスできない状態の人たちです。

2.満たされない顧客: 「現状に不満を感じている状態」です。ミカンを美味しく食べたくても、わたしは筋が飲み込めない。現状の製品やサービスでは満足できていない層です。

3.過剰満足の顧客: 「手軽なミカンが食べたいのに、高価で甘すぎる高級ミカンを出されて戸惑う私」です。企業が機能を高めすぎた結果、「そこまで求めていない」と感じている層です。

ビジネスのチャンスは、すでにある市場のパイを奪い合うことではなく、この「無消費者」や「過剰満足の顧客」の不満や違和感のなかに隠れている状態だと著書には書かれています。

【ポイント2】企業が高機能製品ばかりを作り続けてしまう罠

第2のポイントは「競争のバトル」です。 なぜ、大企業はベンチャー企業に負けてしまうことがあるのでしょうか?

既存の企業は、利益を上げるために、また既存のお客様をより満足させるために、合理的に判断してどうしても「より甘く、より高く売れる高級ミカン(ハイエンド商品)」の開発に向かってしまいます。

彼らにとって、利益率の低い「手軽で安いミカンやいちご(ローエンド商品)」を作るモチベーションは湧きません。なぜならば、既存のお客様はそれを望んでいないと思いこむからです。

これを経営学では「動機づけの非対称性」と呼びます。 しかし、そこに破壊的イノベーターが現れます。彼らは「そこまでの機能はいらないから、もっと手軽で安いものが欲しい」という私のような「過剰満足の顧客」や、「そもそも今まで手が出せなかった」という「無消費者」に向けて、シンプルで安いソリューションを提供します。

既存企業が「高級路線」で戦い合っている隙に、ローエンドから市場のルールをガラリと変えてしまうのです。

【ポイント3】戦略的選択:ビジネスの「旬」を見極め、理論と実践を回す

最後のポイントは「戦略的選択」です。

破壊的な波が訪れたとき、私たちはそれをどう捉え、どう動くべきかを戦略的に選択しなければなりません。

自然界では、イチゴの旬が過ぎれば次の果物が主役になるように、「破壊とイノベーション」のサイクルが、当たり前のように回っています。 自然界での当たり前が、ビジネスでは難しいですね。

今、自分が提供しているスキルやサービスは、顧客にとって過剰になっていないか? あるいは、まだ誰も手をつけていない「季節外れのイチゴを求める無消費者」を救う手立てはないか?素直なこころで考えていくしかありません。

【まとめ】日常の違和感こそがイノベーションの種に

皆様もぜひ、ご自身の身の回りにある「無消費」や「過剰満足」を探してみてください。実は結構あったりします。「これ、ちょっと高機能すぎるな」「なんでこれがもっと手軽にできないんだろう?」という小さな違和感こそが、イノベーションの種になったりするというお話でした。

今週も、新たな気づきを楽しみながら一歩ずつ進んでいきましょう!